今日も晴天!・・・・・・なのはいいけれど、こうも天気が良いと、当然気温も高い。そんな中、部活を頑張っているみんなは、いつも以上に汗を流しているに違いない。ちゃんと水分補給をさせてあげないと!
休憩時間はもちろんのこと、それ以外のときも、迷惑にはならないよう気を付けながら、ドリンクを持って部員の近くを歩いていた。それなのに、部活熱心な私の彼氏――日吉は、休憩時間になるまで取りに来なかった。



、それ貰えるか?」

「当たり前でしょ。って言うか、今は暑いんだから、休憩時間になってなくても取りに来ていいんだからね!」

「あぁ、わかっている。」

「本当に?日吉の場合、部活に集中しすぎて、うっかり忘れてそうなんだよね・・・・・・。」

「馬鹿にするな。喉が渇いたことぐらい、テニスをやっていても気付ける。」

「喉が渇いたと感じなくても、ちゃんと水分補給した方がいいんだよ?」

「そう言うはどうなんだ?運動をしているわけじゃないとは言え、お前だってそんな荷物を持って歩いているんだ。ちゃんと水分補給してるんだろうな・・・・・・?」

「マネージャーは、自分の管理もするから、“マネージャー”なの。」

「だといいがな。お前の場合、1つのことを考えすぎて、別のことに頭がいかないからな。」

「失礼ねー!」



ニヤリと言う日吉に、そう言い返したものの、そういえば・・・・・・と思い始める。
私、いつ水分補給したっけ??
部員に渡すことばかりを考えて、自分のことを後回しにしてたかも・・・・・・。これじゃ、日吉の言った通りだ。
でも、日吉に言われてすぐにドリンクを飲むのは、実は忘れていたと白状するようなもの。マネージャー云々などと勢いよく言ってしまった手前、そんな真似は絶対にできない。
どうせ、日吉もずっとここに居るわけじゃない。今のところ、体の調子は普通だし、急に悪くなるわけでもない。日吉と離れてから飲み始めたって大丈夫だろうと判断し、話を続けることにした。



「じゃあ、そうじゃないと言い切れるのか?」

「逆に日吉はどうなのよ?私が1つのことに集中しすぎて、他のことは考えられない!ってなってるところを見たことがあるわけ?」

「そうだな・・・・・・。思い当たる節が多すぎる。どれから話せば、お前は納得すると思う?」

「・・・・・・。もういいです。納得しました・・・・・・。」

「わかればいい。」



うん、やっぱり大丈夫だ。日吉とも普通に会話できてる。



「でも!今回は、本当に大丈夫だから!」

「そうか。じゃあ、今後も気を付けろよ?」

「うん、わかってる。それじゃ、部活頑張ってね。」

「あぁ。」



日吉との会話を無事に終え、1歩足を踏み出した。
・・・・・・あれ。こんなにドリンクって重かったっけ?何だか、足元がふらついている。
まさか、と思っている内に、だんだん目の前が見えなくなっていった。


次に目を開けたとき、さっきまでの景色とはあまりに違っていた。



?!」

「・・・・・・日吉?ここは??」

「部室だ。全く・・・・・・。どこが大丈夫なんだよ。」

「私・・・・・・。」

「俺と話し終えた後、急に倒れたんだ。とりあえず、少しは休めるだろうと部室に連れて来たが、念のため、保健室にも向かった方がいい。」

「え、連れて来たって・・・・・・。日吉が運んでくれたの?」

「当たり前だ。」

「ありがとう・・・・・・。」

「別に、当然のことをしたまでだ。言っておくが、保健室に向かうときも、1人では行かせられないからな。」

「いや、そこまでは・・・・・・!」



少しずつ頭が冴えてきた私は、起き上がって日吉に抗議しようとした。
だけど、そんな私を日吉が強く抱きしめたから、その後の言葉が何も出なかった。
・・・・・・珍しい。日吉がこんなことをするなんて。



「これ以上、俺に心配をかけさせるな。お前が倒れたとき、どれだけ不安だったと思ってるんだ・・・・・・?!」



それに、ここまで感情を露わにすることも珍しい。そこまで心配してくれている、ということかな。



「わかった。日吉の言うこと、素直に聞くよ。」

「そうしてくれ。」



それだけ言うと、日吉はサッと離れてしまった。そして、そこにはいつもの仏頂面があった。
相変わらず、表情からは読み取りにくいけれど、真剣に言ってくれているみたい。だからこそ、その後も日吉は強い口調で私を非難し続けた。
ふふ・・・・・・。そんな素直じゃない日吉を見るのも楽しいけれど。何より、そんな日吉の真意がわかる自分が嬉しくて、どんどん元気が湧いてきた。



「大体、自分の管理もするからマネージャーだとか言っていたくせに、その直後に倒れるなんて・・・・・・。全く説得力が無い。」

「言う通りです。」

「どうせ、さっき俺が言ったみたいに、周りのことを考えすぎて、自分のことを忘れていたんだろ?」

「はい、その通りです。」

「情けない。」

「ごめんなさい。」

「俺に謝っても仕方ない。・・・・・・とにかく、少し休んだら、保健室に行くぞ。」

「はーい。」

「おそらく熱中症だとは思うが、一応保健室にも連れて行く。」

「うん、そうだね。ありがとう。」



私が笑顔でそう言うと、日吉がスッと視線を外した。・・・・・・これは照れてるんだろう。本当、わかりにくいんだか、わかりやすいんだか。
なんてことを考えていると、こんな状況にもかかわらず、私は良からぬことを思い出してしまった。



「・・・・・・日吉。私が倒れた原因は何だと思う、って言ったっけ?」

「は?・・・・・・熱中症か?」

「うん、そう!」

「それが何だよ?」

「それをゆ〜っくり言ってみて?」

「・・・・・・何のために?」

「言えばわかるよ。」

「・・・・・・・・・・・・。・・・・・・まさか、くだらないことを考えてるんじゃないだろうな?」

「気付いた??」

「お前・・・・・・。」



日吉が照れてるような、呆れてるような、そんな顔でため息を吐いた。その様子を見る限り、私の提案した意味がわかったんだろう。
そう、熱中症をゆっくり言ってみる・・・・・・すると、恋愛に関する文になってしまう。と、どこかで聞いたことがあるのを私は思い出したんだ。
そして、それを今、日吉に言ってみたのは・・・・・・これも暑さの所為だということにしておいてほしい。



「そんなことを言えるようになるぐらいには回復したんだな。それじゃあ、さっさと保健室に行くぞ。」

「えっ?!あ、うん!あの、さっきのは・・・・・・!」



だけど、日吉は何事も無かったかのように聞き流したから、すごく恥ずかしくなった。
それをどうにか弁解しようと、慌てて何かを言いかけたけど、結局何も言うことができなかった。と同時に、言う必要が無くなってしまった。なぜなら、私の口は塞がれてしまったからだ。・・・・・・日吉の口によって。



「・・・・・・。」

「・・・・・・。」



日吉が離れてからも、私は何も言えず、ただ呆然としていた。
そんな私を見て、日吉は少し怒ったような口調で言った。



「お前が言い出したんだからな。」



私を責めた、と言うよりは、明らかに言い訳をしたようにしか見えない日吉。
ねぇ、日吉。彼氏にそんなことされたら、当然私の体温は上昇しちゃうよね?でも、私が本当に熱中症だったら、体を熱くさせちゃダメだと思うんだけど?
だから、言い訳をしたくなる気持ちはわかる。けど、その必要は無い。



「うん、ありがとう。」



だって、私はずっと前から熱中症だもん。日吉に対して・・・・・・、なんて。













 

まさかのダジャレオチ!!(苦笑)まぁ、根本からダジャレですけどね!
というわけで、熱中症ネタ第二弾!(笑)第一弾はblogに書いていた仁王夢です。決して、仁王夢を伏線にしようなどとは思っていなかったのですが、日吉くんがすごく心配をしてくれる、という話を書きたいなぁ〜と思ったら、熱中症ネタを思い出しまして(笑)。

そのおかげで、何と、日吉夢で初のキスシーン!(←)もともと、あまり書かないというのもありますが、日吉夢はよく書くのにキスは初めてだな、と。
そんな記念すべき話なのに、熱中症ネタで良かったのかな・・・(笑)。いや、まぁ、いいか。

('10/09/16)